3.原価意識の向上
原価をつかむことはどの業種どの職種のかたにとっても大切で、しごとをする上で必要不可欠のものです。
会社の全社員が常に原価を意識しながら、しごとをすすめることはコストダウン・利益アップを進めようとしている会社にとってもっとも必要なことと思います。
建設業の営業担当者の場合、仕事をいただくときは、最初に見積書を作成いたします。
この見積書を作成するときは必ず工事原価を参考に見積原価をはじいて見積単価を算出します。
また見積書を発注者に提出し、契約交渉する際に見積原価を把握していなければ、契約交渉は不安でできません。
この見積原価をはじくためには、積算数量・材料の仕入コスト・労務の工賃コスト・外注工事の発注コスト・それに付帯する現場経費等もれなく算出しなければなりません。
もし、積算数量の計算ミス、単価算定ミス等重なった場合、工事をいただき施工して終わってみたら、とんでもない赤字工事になってしまったということも実際におこりえます。
このように営業受注交渉の段階においても、原価を把握することは、とても大切だということがお分かりかと思います。
次に工事の施工管理・実行予算管理等を全般管理する現場管理担当者の場合はどうでしょうか。
仕事をいただいたあと最初に実行予算書を編成します。
その後工事の進捗状況に応じて支払原価が発生しますが、実行予算書でたてた予算原価と実行された実際原価(支払原価)との差異をその都度チェックし、まずい方向に向かっているときは、その問題点を調べ解決すべく最大の努力をはらわなければなりません。
工事が完了してからでは、問題を解決しようとしても手遅れの状態になります。工事途上での実行予算管理がきちっと行われたかどうかで、工事利益が大きく変わってきます。
建設業以外の業種においても、原価を把握して仕事をすることは、同様に大切なことです。
小売業では、商品を販売する営業担当者は仕入原価をつかみ、売価を決めて販売交渉をすることになります。
また、製造業の営業担当者は、製造原価をつかんで見積原価を算出し見積書を作成、得意先との交渉にはいることになります。
この見積原価を算出する時、その会社独自の見積原価算出資料あるいは基準原価があり、その情報を関係者がいつでもどこでも取り出すことができれば営業担当者ごとのバラツキのある見積原価、根拠にかける見積書などは作成されません。
見積数量のみのチェックで、根拠のある明確な見積原価の算定ができるようになります。さらに見積書もスピーディに作成することができるようになります。
どのような業種においても、最初に原価が算出されそれに基づき販売価格、製品価格、受注価格がつくられます。
ものを販売する側の見積原価算定資料等、ものをつくる側の目標原価(予算原価)、どちらのしごとにとっても、原価が企業の利益のカギをにぎっております。
したがってITの活用などにより必要なデータが常時閲覧でき見積原価が簡単に算出できるしくみ、原価管理が簡単にできるしくみがあると、しごとがとてもやりやすくしごとのミスも防げます。
特にものをつくる側の事前管理(目標原価・予算原価設定)、作業途上での実際原価(支払原価)との比較差異管理はとても大事なことです。
このような原価算出の方法及び原価管理を徹底させるしくみづくりができていれば、いつのまにか原価意識が全社員に徹底し企業の利益もおのずと向上していくものと考えられます。
損益分岐点分析(直接原価計算)を活用してコストダウンと利益アップをはかりましょう。(詳細は本マニュアル第4章損益分岐点分析を参照)
直接原価計算というと難しいように聞こえるかもしれませんが、実際にいくつかの公式と変動費・固定費の区分けのしかたを覚えると、商品別・製品別・工事種類別の採算性、コストダウン等に役立ちます。
ひいては、企業の利益アップにおおきく貢献いたします。
1 原価計算に必要な基本的な事項
変動費と固定費の区分けは勘定科目でわけるのが最良のわかりやすい方法です。
あまりシビアにやりますと、資料の提出がおくれがちになり本来のタイムリーな原価管理が出来ないことになり意味をなさなくなります。
○変動費とは
売上高とか生産高の増減に比例して発生する費用です。(製品・商品の売上販売にもとづく費用、完成工事高に応じて比例して発生する費用)
A 小売業の場合
本来は売上原価が変動費となりますが、各商品別の仕入原価を変動費とみなして各商品別の販売価格と照らし合わせ商品の採算性を判断することに利用いたします。
B 製造業の場合
各製品別の製造原価(材料費・加工外注費・直接経費)
C建設業の場合
個別工事別工事原価(材料費・労務費・外注費・現場経費ただし現場担当者の給与・賞与は除きます)
○固定費とは
売上高に関係なく固定費用は発生いたします。
たとえ売上高が0、完成工事高が0、生産高が0であってもこの費用は発生いたします。
給料、減価償却費、旅費交通費等で上記変動費以外の費用を固定費といたします。
販売費及び一般管理費および営業外費用が含まれます。
〇 公式
売上高−変動費=限界利益(粗利益)
限界利益(粗利益)÷売上高=限界利益率
固定費÷限界利益率=損益分岐点売上高(限界利益−固定費=0の時の売上高)
ここで変動費を抜き出し商品等の採算性を検討して営業販売計画に取り入れたいと思います。
商品別・製品別・工事種類別の採算性について
販売商品・販売製品・各工事種類の選定の判断基準資料作成
○ 小売業等で商品別に調査するとき
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商品名
|
売上高
|
変動費
|
限界利益額
|
限界利益率
|
変動費率
|
|
A商品
|
5.000
|
4.000
|
1.000
|
20%
|
80%
|
|
B商品
|
2.000
|
600
|
1.400
|
70%
|
30%
|
|
合計
|
7.000
|
4.600
|
2.400
|
34%
|
66%
|
↓
|
商品名
|
売上高
|
変動費
|
限界利益額
|
限界利益率
|
変動費率
|
|
A商品
|
4.000
|
3.200
|
800
|
20%
|
80%
|
|
B商品
|
3.000
|
900
|
2.100
|
70%
|
30%
|
|
合計
|
7.000
|
4.100
|
2.900
|
41%
|
59%
|
限界利益額が500アップいたしました。
限界利益率の高い商品の売上高構成比をあげることによりまして、利益額が500アップいたしました。
○ 建設業の場合で工事種類別に調査したいとき
○ Aマンション工事・B貸ビル建築工事の場合工事ごとの限界利益率を調査します。
|
工事名
|
売上高
|
変動費
|
限界利益額
|
限界利益率
|
変動費率
|
|
A工事
|
10.000.000
|
8.000.000
|
2.000.000
|
20%
|
80%
|
|
B工事
|
15.000.000
|
10.000.000
|
5.000.000
|
33%
|
67%
|
|
合計
|
25.000.000
|
18.000.000
|
7.000.000
|
28%
|
72%
|
↓
|
工事名
|
売上高
|
変動費
|
限界利益額
|
限界利益率
|
変動費率
|
|
A工事
|
8.000.000
|
6.400.000
|
1.600.000
|
20%
|
80%
|
|
B工事
|
17.000.000
|
11.390.000
|
5.610.000
|
33%
|
67%
|
|
合計
|
25.000.000
|
17.790.000
|
7.210.000
|
29%
|
71%
|
限界利益額が210.000アップいたしました。
限界利益率の高い工事の売上高構成比をあげることによりまして、利益額が210.000アップいたしました。
複数の商品・製品を販売している小売業及び製造会社、種類の異なった建築物を施工している建設会社等の場合、限界利益率の高い商品等をより多く販売すると、売上高は一定であっても全体の限界利益額は増加します。
逆に低い限界利益率の商品等が多く売れた場合全体の限界利益額は低下いたします。
このように自社で販売している商品の限界利益率を把握することにより、どの商品を売るのが一番会社の利益に貢献するのか、一目でわかります。
営業販売計画をたてるときに大いに役立ちますので、この直接原価計算を試みてください。
○コストダウン
直接原価計算で算出した変動費率を活用して効率の良いコストダウンをはかります。
変動比率は、売上高が増えたり減ったりしても常に一定です。
このことを利用して複数の商品、製品、工事建築物等がある会社の場合、変動比率の高い商品等を中心にコストダウンに取り組みますと、効率的に利益のアップにつながります。
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